2017年3月19日日曜日

深夜作業_ 変圧器地絡原因調査

前記事の続きで変圧器地絡原因調査のため深夜0時より測定を
開始しました。
作業について今夜の夜勤者は電気に詳しくないので
私一人で行う様に技術部長からは指示がありました。
私の勤務する会社では最低電気工事士の資格のない人は絶縁抵抗
測定はテナント設備ではさせない決まりとなっています。
ただ測定するだけに思えますが意外と判断が必要な作業なんです。

区分停電させてまで調べる以上はすべての原因になりえる箇所の
測定が必要なのでまず店舗送りの幹線ケーブルの絶縁抵抗測定から!
幹線は営業開始前の早朝作業では何かあったら営業ができなくなる
のですべての利用者が帰宅した深夜以外では扱えません。
高いI0が出たままなら日中でもクランプで追えますが間欠的な漏電
機器不良による地絡現象はこういう手間な作業が時に発生します。
L4ケーブルの絶縁抵抗測定は送り、受け側テナント分電盤主幹を
切り500Vメガの電圧がテナント盤にかからない様にして横河のMY40
絶縁抵抗計で測定を行いました。(1~4までのMCBすべてOFF


絶縁抵抗測定前に上MCBだけONの状態でI0を先に測定しましたが1mA。
テナント回路の影響がないのですからI0rで測定したならば0mAです。
もし負荷がないこの時点でI0で50mAも出る様であればケーブルに何か
異常があると私なら思わずにはいれません!
(I0やI0rは停電させて測定する絶縁抵抗測定と違い電圧がかかった状態
でないと測定できないのはおわかりですよね)

メガのアースリードは盤扉など変なとこではなくて盤内の接地に取付。
次にラインリードを盤金属部に触れて0Ω表示を確認したら準備完了です。
アースリードの取付点に対しての絶縁抵抗値なのです、どうせ扉も接地が
効いているからどこでもいいというのは一般の設備の方にはそういう考え
の方が多いですね。電気主任技術者はその辺はきちんとしましょう。
このメガは500Vメガレンジで2000MΩという高い値まで測定可能、自動放電
機能、豊富な表示内容など値段が高いだけあって優秀です。

結果2000MΩ以上という文句のない絶縁状態です。
(OL表示はオーバーレンジと言いこの場合2000MΩ以上という意味)
こうした幹線ケーブルは内線規程では1メグオーム以上、国土交通省の
基準では5メグオーム以上の絶縁抵抗値
を維持していることを確認します。
これ未満ですとケーブルに不良があると疑うべきである。とあります。
今回のケーブルは対地電圧が100Vの回路ですが絶縁基準の0.1MΩ程度
では人に対しての感電の危険性のみの判定でケーブル本体の異常までは
判定できないと理解すればいいのです。
(人が電気を感じるのは1mAだからオームの法則で100Vを割れば0.1MΩ)
とにかく低圧幹線ケーブルは500Vメガで測定を一般的に行います。
繰り返しますが★送り先のテナント回路主幹はすべて必ず切としてください★


後は各3店舗の絶縁抵抗測定を順番に行いました。
たとえばここは単相三線式盤と三相三線式盤が並んでいますが今回の地絡
は単相三線式変圧器ですから右の子回路に3本線がある三相回路の方は
測定対象外なのです、従い左の盤のみで絶縁抵抗測定を行います。
他レンジ切替可能なメガで測定した場合、それが原因でないにしても機器
などで不具合が発生すると間違えて高い電圧をかけたのではないかという
疑念を持たれるので私の勤務する会社ではテナント内では100V専用メガ
しか使用しない事にしています。
(それにテナント内では20MΩまで測定できれば問題はありません)

結果ですがこの店舗分電盤で0.35MΩが下の様に測定されたのです。
2月の年次点検の絶縁抵抗測定時はここは20MΩ以上であったのに
わずか1ヶ月で0.35MΩなる値は正常な変化ではありません。
ELB回路ならI0が100mAも流れたら切れますが問題の回路はMCB
ですから0Ω位での漏電による短絡でもなければ切れる事ができません。
撮影はフラッシュがあるから明るく見えるけど実際はEPSでL4主幹を
切っていて店内は真っ暗ですから足元に注意しないと転倒します。
(測定時だけL4を入れてもこの盤主幹を切るから同じ事です)
後店内の何かに体が触れ落下させて物を壊してもらっても困るので
私は絶縁抵抗測定では人を連れては作業したくないのです。

今回の様に区分停電ではこのフロアー自体には電気が来てるからEPS
主幹下にある停電時に動作する非常照明27のリレーに電源を配給する
MCBを切れば裏ワザで店内の非常灯を点灯させられます。
ただ盤位置には非常灯がないのでライトだけを頼りに測定しました。

すぐに今回の調査結果を誰でも理解できる様に報告書を作成して会社
に朝一番に報告しないといけません。
★今の時代は"測定して見て異常があった"言葉報告だけではダメです★

0.35MΩが測定された回路はレジスターやPOSなどのお金に関する回路でした。
その回路を切り主幹で再度絶縁抵抗を測定すると20MΩ以上も確認済み。
実は3年前にも他店舗でこういう系統が原因の低圧地絡警報があり調査し
回路確定後にその機器のメーカーが点検をしていました。。
あの時は電源装置が不調という事で交換後は出なくなりましたが今回も同じ
原因か現状ではわかりません。
ただテナントに言うのに不良回路なる表現では基準は?という話となり
0.1MΩを超えてるから問題ないと反論をしそうな店主なのであえて再調査
という事で結果報告書は作成しました。
それと必ずこういう報告書では要点は写真が必要となります。

前記事でも説明した様にこの回路に30mAのELBを入れるつもりです。
一週間に1~2回変圧器で地絡警報が出るのでその時にこの回路で100mAを
超えるI0が発生したらこのELBはトリップし回路不良は確定します。
(測定時は0.35MΩでも急な異常時は0.1MΩを相当下回るという意味)
このまま放置し完全におかしくなって機器から火でも噴いたらお互い困る事
になるのでその辺を店主に説明をして今度ELBの取付をさせてもらいます。

普通のテナントなら今日の報告の説明で業者に連絡してくれますができるだけ
お金を出したくない、気難しい責任者がいるケースでは100%おかしいという
状況を示さないと動いてはくれません。
間欠的にしか異常が発生してない状況ではビルの地絡を検出する装置が壊れ
てるのではないか?とかそういう方は言われます。
特に新米電気主任では本に書いてるなんて言っても誰も聞いてくれないです。
本に書いてあっても経験談がないと相手を説得なんてできるわけありません。

機器メーカーのサービスマンの中には"ビルの人が間違えてメガ測定時に高い
電圧をかけても壊れる可能性がある"とか余計な知恵をテナントに言われそれを
根拠に話を面倒にしてくる気難しいテナントが稀にいるのです。
業者も自分のとこの製品はなるべく原因とはしたくないのが本音ですからね。
ですからテナントの所有物に電気をかけて測定する絶縁抵抗測定という行為は
測定する機器ですら100Vメガしか測定できないなど万全の対策が必要なのです。

漏電のその他・私の経験上の原因
こういう鉄骨に当たる部分の配線表面が劣化して変圧器地絡が間欠的に発生
した事も前にありました。間欠的に発生する漏電というのはこういう接触状態が
微妙に変化する何かもあるわけで機器の暴走という先入観もいけないです。
建物の天井内には空調ダクトがあり常に振動が微妙に発生していて線の劣化
部分が不規則に鉄骨に触れていたのです。

又は飲食関係ではネズミがこういう配線の表面をかじる事でも発生します。
CVTの様な太いケーブルは口でかめないせいか幹線ケーブルではネズミに
よる被害は私は経験していません。IVやVAの配線は割りと飲食ではあります。
だから飲食店は漏電が発生する原因の宝庫でどんなに見える部分を綺麗に
してる店でも一匹もネズミがいない店はないです。
生物被害は機器故障と同じで昨日絶縁測定で異常なかったのに今日急に
漏電が発生する原因の一つ、築5年も経過した建物ならネズミさんはいます。

★商業ビルや病院は事務所ビルより電気主任の活躍の場がたくさんあります★
私はそういうのを謎ときの様に楽しんでお仕事をしてるので苦ではないですね。

見える店内での配線のネズミかじりによるELBやMCBのトリップではすぐに
悪い部分を切断して接続してあげないといけないのでそういう修理セットは
常に準備しておきましょう。
そういうのをできないから電気屋に頼んでください。なんて言っていたら逆
に店の人に"何のためにお前はいるのだ"と怒られてしまいます。
ただ機器その物の異常だけはメーカーに依頼する様に言えばいいです。

機器の配線コードをネズミにかじられるてる場合ですぐに応急修理しないと
料理ができない状況で私がよくするのは配線を剥いてひねったらライター
で接続部分を加熱させてハンダづけしてテーピングする方法です。
100円ライター、ハンダを10cm程度、ペンチだけあれば5分で応急修理
できます。(コード断線は基本一式交換なので機器購入業者に言って
明日でも機器用コードを交換する様に店主には伝えてから終了です)
この100円ライターで加熱させてハンダづけしてる業者を前に見てから
真似をしています。確かにハンダこてなんて机の上しか使えません。
これで修理するとたいていの人は"すごい職人技ですね"と言ってくれ
るので少し気分はいいです。

昔設備の人と蛍光灯の安定器交換をする時にペンチで配線被覆を剥け
ない人がいました。ワイヤーストリッパーなんてない場合はどうするかです。
私が使用してる個人ペンチを紹介します。
室本鉄工のペンチだけど切断、グリップ感が最高でこれなら配線被覆を
剥くのも簡単にできます。だから会社のは私は使いません。
下手な人も使う会社の共用工具はガタツキや切れ味が悪過ぎです。
最初に被覆を薄皮1枚で回して切り、引っ張れば綺麗に剥けますが中の
線に傷をつけず薄皮1枚切れ目を入れる感覚は練習されてください。
物を的確につまむ、線被覆を綺麗に剥く、力を効率的にかけられるという
点で電気作業をする時は室本鉄工のペンチは最高のペンチです。
安いペンチは切れ味が悪く力を入れすぎて線に傷がついてしまうのです。
最近100円SHOPでもペンチを売ってるけど切れ味は最悪ですからダメ!

電気主任をするなら最低でもペンチとドライバーは自分で良い物をそろえ
ましょう、物を回すのでもモーターレンチでもパイレンのどれでも良いとしか
思ってない設備員のいる職場の工具はたぶんどれもガタガタです。
いくら何かの理屈に詳しくても現場工具状況を見れば程度はわかります。
昔父から工具というのはお仕事の要で工具状況の悪い職場にたいした
人間はいないと教わったけど今は私も理解できます。

そういう先輩の教えてくれる事なんて言葉で感謝してますが全部記憶から
私は消しています。職場で見習えるべき先輩というのは一握りですね。
理屈ばかりで手より口ばかりが先行する人はたいてい実務はダメ!
実務ができないからやたら虚栄心が先行しておしゃべりなのです。
だからプライベートでもおしゃべりな人間って私、嫌いなんです。

単相三線式からの照明回路線間電圧200Vは対地電圧100Vですから100V
コンセント回路と同じ絶縁判定をして構いません。
ただこうした回路は正常ならば通常20MΩあって当然で法定の0.1や0.2MΩ
というのは最低基準
である点だけは認識しておきましょう。
はっきり言って1MΩ未満の値となる時点で実際何か劣化が発生しています。
★そういう点では内線規程にある"1MΩ以上が好ましい"を支持します
私の経験上、新設でなく10年経過していても1MΩ以上の絶縁抵抗値は常識です。
0.1や0.2MΩあれば法的に問題なしと処理したらいずれ変圧器地絡やELB
が急に切れ、電気主任に連絡が来るのでそのツケは結局自分に戻るのです。

⇒私のブログの最新記事へJAMP