電気主任技術者 電気機器温度管理

前記事のコードリール火災の続きで温度上昇の復習をしてみました。
モーターの温度管理は重要で過去モーター表面温度が90℃を超えて取替と
いう事態になった事が一度だけあります。
絶縁階級がE種の場合は許容温度は120℃ですが業者によれば表面で20℃
程度低下するという意見があったのでそうなれば100℃を越せば絶縁破壊を
起こしてしまい相間短絡するのは時間の問題でした。
これは私が勤務する現場にある消防ポンプモーターで絶縁階級はB種
だから表面温度で130-20=110℃が限界
と判断できます。
ですが通常は50~60℃程度でこういう負荷が固定したモーターが85℃とか
に急になれば何か劣化兆候があると私は考えています。

モーター絶縁階級は乾燥した屋内ではE種、屋外や耐久力を要求される
物はF種やB種
を私が勤務するビルでは使用されています。
屋外モーターなんて10年以上雨ざらしなのにまったく故障する事なく夏場は
毎日動いてるのですからガチな耐久力です。でも永久じゃない!

モーターは熱容量や熱放散を考慮すると内部から外部に熱が移動するのに
ある程度の時間がかかり、運転開始の初期には温度変化が遅れます。
絶縁物の寿命に影響を与えるのは最終上昇温度との事です。。
下写真は冷房用の屋外冷却水ポンプ、これで温度変化を検証してみましょう。
この検証は実は10月頃にした物ですが朝方でモーター運転前は周囲温度
とほぼ同じ表面温度で26℃でした。
運転開始してから15分後に表面が43℃、更に15分後に56℃となりました。
最終的には58℃で発熱と放熱のバランスが成立して最終上昇温度となっ
たのです。(屋内設置では放熱低下で屋外より5℃程度高くなる傾向)

レザーポインターのある通常の非接触式温度計は受変電設備の温度測定で
使用しますが機械巡回時では上の料理の温度を測る非接触式温度計を個人
的には利用しています。(いつでも携帯できる)楽天で購入!ですが下と1℃も
誤差がないので信頼性はありますよ。

この15分というのは昔父から教えてもらった方法で2回目の15分つまり30分後
の温度からそう大きくならないなら大丈夫という話でした。
でも根拠があるのかないのか、あくまで個人の経験法則か以前から気になって
いたので検証を行ってみたのです。
少し勉強して調べてみたらモーター温度というのはR-L直列回路の電流変化
と同じ様な★指数関数的な変化をする★のですね。
つまり最終値である定常状態と変化途中の過度状態で表す事ができます。
そうなると最初の15分をt1、次の15分をt2としてその時の温度を各θ1とθ2と
して最終上昇温度をθ∞と表す事とします。
Tとは時定数といいθ∞の約63%に達する時間を意味する物でこれが小さい
ほど早く定常状態に落ち着きます。(t2=2t1はわかりますよね!)

①は最初の15分t1の時の温度を表す式で②が30分目t2の温度を表す式
次に①式を二乗すると③式となりこれが②式と等価となる事に気がつきます。
後はθ∞を機械的に求めて行けば最終上昇温度を示す式が得られました。

その式にθ1=43℃とθ2=56℃を代入して見ると57.8℃が得られました。
実測は58℃ですから偶然か、結果と理論値はほぼ一致しました。
ただ私も実際にこうした設備を保守する立場の人間として父が言う15分間隔
温度点検というこの方法はかなり的を得てると思います。

前記事でコードリールが火事になった件を温度上昇で検証してみました。
おそらくこういう物もモーターの様な指数関数的な温度変化をすると思います。
その時はコードリールにヒーターなどを接続して割りと早い時期に焼損してい
て仮に30分でVCTが70℃に上昇したとするならば、この70℃は上式で言えば
θ2だから放置すればθ∞は100℃を越していたはずです。
もし誰もその変化に気がつかず最終状態まで行けばコードリール全体が火の
塊となり周りに飛び火していたでしょうがそこまでは至ってはいません。

仮に最終温度上昇を100℃、煙が出た30分時点を70℃とすれば15分時点
を計算すると約45℃と触れたら熱いと感じるとこまでなっていたはずです。
あくまで独断と偏見だけど機器を接続して使用開始した場合は最初の15分
時点で熱いと感じる様であれば継続使用を考えた方がいいとすべきです。
(解の公式では2個の値が得られますが1個だけが適する値です
このBlogの閲覧者は電験三種を目指してる方が多いと思いますが今回
の記事内容は電験三種を勉強した方なら理解できると思います)

前記事でも書きましたが今度テナントの火元責任者を集めて今回の出火に
ついてセミナーを私はする命令が出てるので頑張ります。
まず温度上昇の例を上で書いた様なモーターの例で説明して最後に今回の
コードリールの異常加熱⇒火災まで話をする資料を今作成しています。
私が語る側なので貴方が電気主任として同じ立場になったらそこでも同じ様
に考えて説明すればいいんです。
それでテナントやオーナーから"勉強になった”とか感謝されたらその現場
での貴方の評価が上がるし自分をプレゼンテーションできる機会です。

絶縁物の耐熱温度を越せば寿命は著しく低下する検証
電気に係わる人は寿命を判定するモルチゲルの公式と10℃半減説は聞かれ
た事があると思います。
①がその式です。②は絶縁物が130℃まで上昇した寿命T1③は10℃半減説
を適用して定数βを逆算してみました。
次にA種絶縁物が定格の105℃まで上昇した時の寿命を示す式T2が④でそれ
に②③の結果を代入してみます。(★計算は電験三種の範囲です)
耐熱温度になった時の寿命T1が資料としてあるならば130℃まで加熱した時の
絶縁物の具体的な寿命時間T2は計算できますがわかりません。
仮に適当に1000Hとするならば176Hでこの結果からA種絶縁物を130℃で使用
すると寿命は1/5以下になるのだけはわかります。


解説:指数計算の公式の確認、次に③は10を二乗したら100ですよね、逆に
2は10を底とした100の対数であると同じ考え方で変換すればいいんです。
⑤のεは自然対数の底で2.718それを1.7325乗すれば5.65が得られます。

関係式が判明したのでエクセルで式を組んで105℃を1とした場合の温度超過
による寿命の推移をグラフ化してみましたがありえないけど160℃になんかなる
と一瞬で絶縁破壊してしまうという事ですよね。


これは2016に交換したモーターだけどトップランナーのシールがあります。
(昔の汎用モーターより価格が高いので消防ポンプ、非常用ポンプなど滅多に使用
しない物についてはトップランナーモーターはメリットがない)
今はモーター取替すれば必ずこれになるのですが通常運転ではコイル抵抗も少なく
数%の省エネとなります。ただ起動電流が逆に高くなる癖が同時にあるのです。
陰と陽の関係は万物の法則で"何かを強調すれば同じだけのマイナス要素が出る
のは当然"と私程度は理解しています。(欠点のない物は人には作れない)

よくわかってる業者なら安心だけど少し工事費の安い取替業者に同じ用にモーター
交換発注をして起動時に何か異常があってもそれは指示されてないと逃げます。
モーター交換を発注する場合は事前に既存の電源装置でも問題がないのか?
よく検証が必要です。
一斉更新を計画してる場合に予算の関係で電源周り(MCBやマグネット)だけを
先に既存SPECで一斉更新すると後で今のモーターが使用できない危険性あり。
昔の汎用モーターからトップランナーモーターへの移行は気をつけましょう。

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