2016年12月22日木曜日

電気主任技術者 排水不良対応

通常5分程度しか運転しないある排水ポンプがPC監視盤で20分も運転
してるのでポンプ点検から帰ってきた職場の人から"雑用水槽ポンプの
NO2が排水してない"と報告がありました。
丸山さんいつものアレをお願いします。と言われました。
まずこれがそのポンプが吸い上げた排水が上がってくる配管です。
様するにこの雑用水槽の底にある水中ポンプに異物がつまり水を吸わ
ない、モーター運転電流とポンプのデリ側圧力値でそれはわかります。

これが実際の設置状況です。
こういう中は特殊業者が中に入り年に数回清掃はされています。

これがそのポンプの制御盤(自動交互運転)で5.5KWが2台の直入方式
で何も特殊な事はありません。
5.5~7.5KWはビル設備程度の始動トルクを過大に要求しない負荷では
起動回路が不要なのでビルでは一番多いサイズのモーターだと思います。

MCBの二次側でNO2電流を手動運転で計測すると約5A(4.7A)です。
実際に槽内に水がなくて空転ならエアを吸込んでガーと底のポンプから
大きな音がしますがこの場合は.....
ストローの先端をつぶして吸ってもまったく水が上がらないのと同じ様に
無音に近い運転状態で配管内か吸込み口かに油の塊か何かが詰まって
います。(実際に槽内に水がないなら空転となり5Aとなるのは正常)

ポンプ圧力計も0に近いはずでもし圧力が出てるならばポンプ二次側の
配管詰まり
ですからその場合は業者に至急連絡が必要ですがそれは
よほど管理の悪い現場でしかならないはずです。
ポンプ二次側詰まりならば電流は上の5Aよりはあるけど運転電流には全然
不足した値で10Aとか程度となります。
だいたい排水ポンプの運転音と電流値で大まかな詰まり箇所は想像できます。

排水詰まりの8割はこのポンプ逆転で解消できます。
正常状態の結線からNO2ポンプ用MCBの赤と白を外しそれを逆に接続。
そうポンプを逆転させてその異物を取るのです。逆転させて底に落とせば
時間が経過すればその塊は溶けて小さくなります。
三相電源のどれか2本を入れ替えたらモーターを逆転できます
ただモーターの逆転は問題ないけどポンプの逆転を長時間行うと故障の
原因になるので1回10秒運転を3回のみ行い再度正規配線に戻し運転
して電流値で詰まりの改善を確認します。
ポンプは圧力方向が一方向のため逆にするとビスなどが緩んだり組立その
物に歪が出てしまうそうです。(メーカー見解)

でもここで一工夫が必要になります。
この制御盤は過電流以外に逆相と欠相も見てるので逆配線のまま盤
から手動運転をしたら警報が出て運転は強制停止となります。
そこでまず制御電源を切り制御を停止させます。
上でNO2ポンプマグネットのここを指で押さて強制的にマグネットをON
状態にさせればモーターに通電されるためポンプの逆転ができます。


逆転後に結線を正規に戻して運転電流を再度測定してみました。
★電流は16.8Aと回復して詰まりは解消されました★
詰まりが解消され揚水という仕事をし負荷がかかってるという意味。
5.5KWのモーターなら定格で19A程度だから電流値も問題なしです。

逆に詰まりではなくて硬い小さな金属物がポンプの羽などに引っかかると
ロック状態に近くなり私の経験上通常の運転電流より高くなります。
(放置してるとTHRが近く動作して緊急停止がかかります)
異音もしてるはずでたとえ揚水ができても早急に対応が必要となります。
機械的に破損をさせてしまうと水中ポンプ一式交換もありえるからです。
こういう場合もポンプ逆転で軽症の金属片程度なら取る事ができます。
それでダメなら業者に依頼してこのポンプを床までチェーンブロックで上げて
もらい直接取ってもらうしかありません!
(深夜作業ですからこれだけで15~20万円かかった事があります)

ところでこういう排水ポンプには逆止弁というのが必ずあります。
逆方向には水は流さないためでもしそれがないとポンプは自働交互運転
なので1台運転した時にこの様にリバースしてポンプがいくら正常でも水
を建物外に排出できません。意外とベテランでも知らない人がいます。


負荷がポンプでなければ駐車場パレットの上下、又は反転など動きを逆に
途中でする必要性は世の中にはたくさんありますからその場合マグネット
の接続は必ずこうなっています。
シーケンスとしては2個のマグネットは同時に投入状態とならない安全回路
は必ず入っています。

電験を通じてしか電気を知らない人にはたとえば30KWのモーターなら例
のP=√3VICOSφで力率0.8、200Vならば101A必ず流れると思ってるで
しょうが実際はそれより全然少ないのが普通なんです。
負荷が30KWのモーターでは不足する場合に101Aを超えますがそうなら
ない様に適切なモーターが選択されています。モーター定格電流の6~8
割程度で運転されてるケースがほとんどのはずです。

★モーターは計算上の定格電流で運転する事はそう多くはありません★
最近のモーターはトップランナーの省エネモーターなので運転電流は
少し減り省エネになっていますが逆に起動電流が少し増加するので既存
電源回路で大丈夫か検証が必要となります。
特にマグネットだけを一斉更新計画をされてる方はその辺は十分に注意
されてください。
特性表を見るとモーターが大きくなるほど昔の既存モーター
より起動電流が増加する度合いも大きいのです。
利点を生み出せば逆の欠点が発生するのは万物の定理ですから!

フロート制御ではフロートの体勢が異物のせいで変わらない場合は水が
なくてもあるという事になり最後は空転で回り続けます。
これではモーター冷却が水中ポンプのためできなくなり絶縁破壊の危険
性大です。(排水槽には通常、減水警報はなし)
又逆にポンプがいつまでも回らないないで満水警報が出る可能性もあり
ます。(満水警報が出ると2台強制運転となります)
その点では前述のポンプ詰まりがないなら満水による実害は少ないけど
満水が頻繁に出ると運用上で不都合な現場が多いはすです。
(電極式は受水槽の様なキレイな水を扱う環境しか使えません)

油の塊かパン粉の塊か?とにかく異物が多い状況ならば電極式もフロート
式も適さない状況は実際ありえます。
飲食店舗の集合排水槽ではどこの店舗がこっそり違反してるのか特定は
まず無理なんです。違反者は何を言っても結局されます!
(油処理をしないまま無断で排水に流しているという意味)

こういう方法には賛否両論あるかと思いますが一部のそれにはこういう改造
を私がして現在は正常に運用しています。
E4が満水、E1がポンプ起動、E2がポンプ停止、E3が共通、分かり易い様に
電極式で記載していますがフロート式も配線と水位ユニットの取込は同じ。
つまりE1とコモンのE3に該当する配線をタイマー接点で一瞬短絡すれば
擬似的に水がE1まで到達した状態となり水位ユニットが動作します。
その後E2まで水位が下がると自働停止するのは変わりありません。
下の様に水槽からのポンプ起動配線のみを抜き、他はすべてそのままです。

通常のタイマーではON/OFFの回数はデジタル方式でさえ10点は無理なの
でINVというインターバルタイマーで毎時間同じ動作をさせました。
つまり毎時間00分でポンプ起動電極を1分短絡させポンプのOFF制御で
停止させるという方式なのでポンプ運転時間は3~5分で固定ではないです。
1分は単にこのタイマーの最小ON/OFF時間だけで1秒でも構いません。

店舗が厨房を使用しない時間帯まで強制起動してはわずかの時間であっても
空転を夜中に繰り返ししてしまうのでタイマーが2段で必要となるのです。
2個の条件を同時に成立させる場合は接点を直列に接続します。
(左のピン式タイマーは15分単位なので1分間のみONというのは無理)

実績としてこの場所のポンプでは1時間に1回強制運転で3~5分運転でき
ますが上のE1-E3短絡時間はその時間より長く設定してはいけません。
その点で最小の1分というのを設定しています。
もちろん違うパーツで工夫すれば1秒短絡もできますが1分が一番簡単に
できる最短時間の設定と言えます。

Aが開店時間用タイマー、Bがインターバルタイマー、Cが秒タイマー
Xがリレーです。(これらALLパーツ代で3万円程度)
どうしてもE1-E3間を1秒短絡とするならばインターバルタイマーがON
したら1秒後に動作してE1-E3間を切る制御用の秒タイマーCを追加
したらいいです。(タイマー通電後にONがOFFになる限時動作b接点)
ただCは制御用のため物によっては200⇒24Vに変換するトランスが
必要となる場合があるためACで使用する場合は電源を確認の事。

限時動作b接点の動作です。

こういう秒単位のタイマーはモーター式では制作は無理なため
すべてソリッドステート・タイマとなります。



実際1ヶ月この運用をしてその後で内部を目視点検したら槽内がびっくり
するほど綺麗だったのです。

つまり★毎時間必ず運転する事で★排水が速やかにされるため濃縮が
なくなったせいだと思います。(通常は水位が規定まで上昇して運転開始)
こういう排水槽は排出物を濃縮させない様に排水すれば逆にフロートに
係わるトラブルはかなりなくせるというのを私なりに感じました。
(油成分が蓄積して冷えた時に固まるのが一番の原因は私は途中から気
がついてはいました)

昼間毎時間こうした排水槽を1時間に1回強制起動させるのは槽内
濃縮防止とポンプ詰まりを効果的に防止できる方法と思います。

ただ事務所ビルの様にトイレ排水のみなら排水ポンプ詰まりトラブルは
まずないので飲食店のある現場で排水ポンプ詰まりが発生するという
なら対策の1個として検討されてみてください。
業者の経験談では粉を使う店がいるとこうしたポンプ詰まりが発生する
事が多いそうで悪戯で油の不法投棄というのも想像説ですから実際は
安易に各店舗には言えないのです。

こういう既存動作の改造というのは責任が発生するので業者の方から
は提案してきませんから電気主任技術者が提案して自ら配線施工する
必要があります。
★既存にある物を既存の状態に修理するのが業者の仕事★それ以外
の改善となれば私の様な電気担当者の出番だと思います。
もちろん責任は発生しますがお仕事では責任はすべてに生じるので
責任を恐れていては電気主任技術者なんてできません。

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