電気主任技術者 変圧器突入電流

前記事の受電設備停電・復電記事の中で変圧器の突入電流に
ついて触れましたが少し詳しく記事にしてみました。
VCBがある部分にはOCRトリップの要素が必ずあります。
変圧器に電圧を印加した時に一次側にその変圧器の定格電流の
3~10倍の電流が極瞬間のみ流れる事になります。
安全を見て10倍と言われる変圧器メーカーの方が多いと思います。
つまりVCBのOCRの瞬時要素を二次側にある変圧器の定格電流の
合計値の10倍で動作しない様にすれば電源配給元のVCBはOCR
動作でトリップしないという理屈が結論です。
(写真は私が管理してる第1電気室の各VCB盤)

私が管理する52F1回路のOCR設定の瞬時設定を例に説明します。
この設定をした人に直接聞いたわけではありませんが値的には納得
しています。
変圧器突入電流は厳密に言えば投入した瞬間の電圧の位相により
異なり電圧0の瞬間が一番大きくなります。
ですから常にこの変圧器バンクの一時側に瞬間的1760Aもの電流
が必ず流れるわけではありません。
ただ電源投入瞬間の電圧位相など誰もわからないので最大値で検討
するしかありません!

限時設定について
上で4台の変圧器定格状態のCT二次側電流は2.2Aなのでこの1.5倍値
を求めると3.3Aなので3Aを設定すると定格値では動作しないが1.5倍
負荷でOCRが動作する通常の過電流に対する特性動作。
ダイアル(時間特性)
突入電流は短時間で値が収まるが仮に1秒とするなら22A÷3A(限時
タップ値)つまりタップの7倍の電流の時に1秒で動作しない時間ダイアル
を選択します。(つまり限時設定にタイムラグをこれで与える)

突入電流の発生が限時動作の設定にはかからない様に時間設定を
別にしてもある値以上になると瞬時で切る瞬時動作がこの場合は問題
となるので瞬時要素の設定値の検証が突入電流では必要なのです。
OCRの保護曲線の後半(瞬時要素)部分に突入電流曲線がクロスして
しまうとOCRが動作してVCBはトリップしてしまいます。
ここを上の場合では約10倍値にしてわずかでも左側になる事で突入
電流動作では動作しない事となります。こうした保護曲線で検証します。

このシリーズの変圧器で500KVAの場合では瞬間308A(定格の7倍)
0.1秒後に178A(定格の4倍)、1秒後に62A(定格の1.5倍)と減衰。
限時設定(定格1.5倍で1.5秒動作)なら1.5秒時には定格の1.5倍
未満ですからその設定のままで突入電流では動作しないですよね。
こういう変圧器の特性表までがあるならより正確にOCR設定はできます。

変圧器の突入電流に限らず下曲線にあるOCRの限時と瞬時の左側にある
機器の電流変化はOCRの動作対象外となるのです。

最初はバンクの1系統だけを考えて検証しましたが実際は更に保護協調
を意識して設定しないといけないので難しいです。
下の系統において下位OCRの保護曲線は上位OCRのそれより必ず左側
でないと保護協調が成立していません。

OCRの設定は全体のバランスの中で決めないと負荷側より先に電源側
がトリップしていては全館停電してしまいます。
又高圧の受電系統では電力会社にその建物へのOCR設定も聞いて電力
側が一番右側に来る必要もあります。
そうしないと同じ系統に他需要家がいる場合は波及事故となります。

変圧器等の機器追加でOCR設定変更が必要な場合はメーカー技術者
のこうした事に詳しい方に設定をしてもらってください。
もちろんよほど詳しい方なら電気主任技術者がしても構いませんが
間違えたら大変な事になるので本当に詳しい方のみ!

なぜ変圧器の電源投入時に突入電流なる大きな電流が流れるのか説明
すると変圧器が無励磁の状態で1次側に電圧を印加した瞬間は変圧器
には逆起電力が発生していません。
結果リアクタンス分が零となり、変圧器1次側が短絡されたのと同じ状態
となり、過大電流が過渡的に流れるからです。

変圧器突入電流には第2高調波が多く含まれていることから成分比較を行い
事故電流と励磁突入電流を判別するという製品も販売されています。
突入電流を下げる方法として磁束密度を低減、飽和磁束密度の高い材質
巻幅の狭い巻線など構造的な対策ある様ですね
ただより突入電流のより低い変圧器を製作するとなると変圧器自体が大き
く重くなり価格、施工面で限界があると思います。
尚、各変圧器一次側LBSにある電力ヒューズは変圧器用(T)で突入電流
では溶断しない物が取付されています。(電力ヒューズには用途種類あり)

力率改善用のコンデンサーを電路に投入する時もそれの定格電流の10倍
以上の突入電流が極短時間流れます。

ただコンデンサーの場合は直列リアクトルを設置することによっ約5倍程度
にまで抑制することができるのです。
それに合わせてCT二次電流を逆算してOCR設定をすればトリップは防げます。
又使用中のコンデンサーを切ると残留電化を放電するまでは再投入させない
シーケンスが通常どこでも入っています。

私が管理してる現場の機器で説明すると、初めてこういう機器を見た方は
直列リアクトルを小型の変圧器と思うかもしれませんね。
手前の小さい機器の方が実は主役なのです。

制御回路内に再投入抑制用のタイマーがあります。
極端に言えばこれを0にすれば即時投入できますがそういう事はされない
でください。過電流に至る可能性大です。
(電源電圧+残留電化で6600Vより高い電圧を加えた事になる)
VCSとは簡単に言えばVCBと同じ様に高圧のSWと思ってください。

回路的にはそれほど難しくはなく基本的な作りのシーケンスです。
一度コンデンサーが手動でも自働でも入らなくなりタイマーTM1を
取替した事はあります。
回路を見ていて気がつかれたと思いますがVCSはVCBの様に27で
トリップコイルを動作させなくても(と言うよりそれがない)マグネット
の様に常時励磁が必要で電源配給がなくなると切れてしまいます。
常時励磁のためVCBよりVCSの方が劣化進行は早いはずです。
10年もオーバーホールをしてないとしたらヤバイかもしれません!

近日受電22000V用VCBの更新工事を行いますが私がお休みの時
に製品だけが届いて特高室の前に仮置きしてありました。(11/3)
交換理由は工場でないと修理ができないからで一時も外せない機器
は修理可能でも本体一式交換するしかありません。
これを選定する時にメーカーからVCB二次側の短絡電流を質問され
電力会社に短絡容量計算書コピーを頂いて逆算したらこの地点の
短絡電流は約5500AでこのVCBは16000Aまで遮断できるので十分
な遮断能力がありここでは使用可能と判断されます。

最初に取付した時に検証したはずの受電点の短絡容量計算書が
現場にない場合は電力会社に保存してあります。
受電点の短絡容量計算は電力会社でないと計算できません。
高圧機器更新ではその値が必ず必要となります。


11/4朝出勤したら特高室の前にいきなりこんな物が座っていました。
夜盤屋さんが来て入れ物を組み立てVCBを設置、配線したらしいですね。
しかし...こんな重そうな物をどうやって特高室内に移動させるのか楽しみ!
せめて部屋の中で組立てたら良かったのにと思うのは私だけかな?

とりあえず扉を開けると22000V用のVCBが姿を見せました。

取扱いは通常のVCBと同じなのは見ればわかります。
引き出しレバー、手動投入ボタン、状態表示、動作カウンター
通常はこのVCBについてる手動投入ボタンを使う事はありません。

VCBの裏はまだ埃がかからない様にビニールシートがあったのですがこれ
ってもしかしてサージアブソーバーでしょうか?
高圧用、定格遮断電流12.5KAのVCBが100万円程度だから遮断電流
16KAで定格電圧24KVでは150万円?、サージアブソーバー、ラック、配線
加工で300万円、設計費、実際の工事施工費etcとかしてたらたぶん今回
のVCB更新工事では1000万円はかかると思います。
来年2500KVAの変圧器を追加するのですがそれは工賃込みで4000万円
とか(盤や配線工事含む)予定は12時間停電を2回に分けて施工します。
こういう工事では電気工事施工管理技師が現場代理人となりその人が工事
の総監督となります。

テナントから休憩室の座敷でホットカーペットを使うのとエアコンを使う
のはどちらが省エネかとの問い合わせを受けました。

電熱器(ヒーター)を1とした場合、最近のエアコンは最低その4~5倍の熱
を同じ電力で発生できますからエアコンの方が省エネとお答えしました。
(参考までに)
エアコンはジュール熱で加熱するのではなく外気から熱を吸収するのです。
電気を直接熱に変換する方式では1KWH当たり860Kcalしか発熱できない
2.8KW出力エアコンならわずか0.56KWHで2500Kcalの熱を放出可能。
同じ1KWHで比較すると4464Kcalで860Kcalの約5.2倍


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