電気主任技術者 三相誘導電動機の単相運転

三相モーター1相がマグネットの接点不良などの理由で単相状態と
なった場合は電流が√3(1.73)倍になる
は聞いた事があるでしょう。
以前私は2倍になると記事にしましたがその理由を今日は説明します。
これは三相モーターが単相状態となった場合の3台分の計測した値で
確かにどれも値が約2倍になっています。(某社発表データーより)
(A機でT相が1.83倍、B機でR相が2.03倍、C機でT相が2.05倍)

三相誘導電動機の1相が欠相すると回転できないと思ってる方が
NETを見ると割りといますが実際ビルのファンの様な軽い負荷なら
運転継続できます。以下メーカーサイトの記事を紹介します。
(軽い負荷とは人間が手回しで軸を回転できる様な機械の事)

誘導電動機の基礎をまったく知らないでは話が見てこないのでまず
モーター(誘導電動機)の基本的性質を説明します。
今のビルでは巻線形三相誘導電動機を使うターボ冷凍機とかないので
扱う事になるのはかご形誘導電動機(空調機、ポンプ)と思ってください。
ただ構成パーツが少し異なるだけでモーターの回転原理は同じなので
その古い現場で巻線形があってもかご形誘導電動機を理解してる人
はすぐに巻線形誘導電動機も理解できます。下説明はかご形について。

上で説明した様にローターに発生する電圧E2により誘導される電流I2
による二次側回路の消費電力を二次側入力といいます。
モーター回路を変圧器みたいに一次側、二次側と言われても一般の方
は本でしか見た事がないので困惑されますが二次側とは回転するローター
に流れる電流回路の事を意味しています。
このローターは太い導線(バー)をかご形に配置された構造になっていて
ここからこの方式のモーターをかご形誘導電動機と言うのです。
強い始動トルクを得るために回転子導体の抵抗を始動時は大きく速度
が上昇したら小さくするみごとな仕組みのかご形誘導電動機もあります。
こうする事で大きな始動トルクを得ます。(比例推移の特性を活用)

R=r2(1-S)/Sの抵抗で消費される電力を機械出力Pmといい皆さん
がよく"これは30KWのモーター"とか言うあの数値となります。
r2の抵抗で消費される消費電力は二次側銅損Pc2ですね。
RにすべりSの係数があるという事はモーター回転数により変化します。
P2:Pm:Pc2=1:1-S:Sの重要な関係があり(Sはすべり後半で説明)
モーター修理は工場の技師でないとできませから構造理解は上程度で
とりあえず十分ですが運用上の変化を知る上ではこうした等価回路上の
意味を電気主任技術者は理解しておかないといけません。

誘導電動機の起動電流が高くなる理由を等価回路上で解釈すると
二次側は結局上の通りにリアクタンスx2と合成抵抗r2/Sとなります。
モーター起動時、つまり回転数0ではS=1でr2+X2への電圧印加となり
起動電流として高い値となりなますが、定格速度となりSが3%(0.03)
となればr2/Sが大きくなり電流は運転電流で落ち着きます。

★誘導電動機はSは絶対に0にはなりません★(同期速度にならない)
誘導電動機はすべりによってローターに誘導電流が流れ回転する
磁界との相互作用で回転力が生じるモーターです。
誘導電動機ですべり0になるとローターに誘導電流が流れなくなり
電流と磁界の作用による回転力が発生しなくなります。
誘導電動機のすべりは回転ロスではなく必要な現象なのです。

下は私の勤務する現場にある屋外モーターですがプレートでSPEC
を確認してすべりを計算してみましたが3%、誘導電動機はどれも
この程度のすべりだと思います。屋外なので文字色は消えてます。
同期電動機は同期速度で回転するためすべりはなし、ただこれは
扱いが難しいのであえてビル設備程度で使う事はないと思います。

モーター基本性質を理解した上で実際の現場運用の状態はどうか
電源において電圧、電流が完全な平衡三相交流は存在せず日々
の点検でモーター負荷電流を測定すると18A、18.5A、17.9A程度
の電流のバラつきは誰もが容認してるはずです。
たとえば三相配給電圧のバラつき、変圧器元では正常でもその間の
負荷アンバランスが原因でモーター受電点で電圧ばらつきがあると
当然各電流はそうした値結果になるでしょう。

又文献にも線路、負荷の各インピーダンスにおいて3線完全なる一致
は現実ありえないそうです。
この場合厳密には不平衡三相交流を扱う事となり、不平衡三相交流
の成分として正相電流I1 、逆相電流I2、零相電流I0があります。
ただ理解には電験三種範囲を超えた対称座標法が必要になるので
得られる結果だけを記事にしました。

各相電流が完全に同値の平衡した状態では正相電流しか流れませ
んが値に違いがある場合のみ逆相又は零相分も流れるのです。
(三相誘導電動機は中性点が非接地なので零相分の影響はない)
この中で正相分のみがモーターの機械出力となるのです。
(つまり電圧にアンバランスがある程、機械出力は低下する)
逆相成分は電源相回転が逆相回転の三相交流でありモーターに
とっては逆方向の回転力以外に加熱、振動の原因にもなります。
モーター点検において各線間電圧や電流を測定するのは実はこの
不平衡三相交流の度合を点検しているのです。


①は逆相電流による入力減少分を考慮した二次入力の計算式で③式
は三相状態⇒単相状態でも要求負荷は同一なので三相運転時電流I
による二次入力と=にして変化後の正相電流I1を逆算しました。
(逆相電流による回転磁界は滑り2-sで回転しています)
更にこの正相電流I1を√3倍すれば単相状態の線電流となります。
④ですべりが3%⇒4%に回転数が変化したらどうなるか?を検証!
S1が正常時、S2が単相となり回転変化した時として、結果約2倍に
なるという答えが得られ冒頭のモーター実験結果を納得できます。

"三相運転が単相になる"は最初平衡三相運転していて、単相時には
不平衡状態となる事で逆相トルクが発生した場合を定義
するわけです
から回転数がまったく低下しない。と言う考え方こそ逆に不自然です。
(前述した様に逆相トルクとはモーターを反対方向に回そうとする力で
平衡三相運転してる時ではこの力は発生しません。)

次に回転数が低下しないとしてすべりが3%のままとして上の④式に代入
して計算とすると√3×1.007倍のつまり回転数が低下しないとするなら
単相運転時は例の√3倍の電流でJUST正解です。
簡単に人に説明するなら三相動力は√3VI3で単相時がVI1であり要求
負荷が同じとして両式を=で結んでも√3I3=I1の関係式は発生します。

逆相トルクは逆相電流による物で負荷が多ければそれも増加するので
無負荷に近い状況ならばほぼレベルでそれもあり得ると思います、結局
負荷は現場事に違うので他人様に正確に何倍と数値で表現するのは
無理なんです。
★目安として倍程度が無難でしょうね★

いずれにしても少し間を置きTHRが動作し電源を切る事となりますが
ただそのまま再度起動するのだけはおやめください。
マグネット接点がすでに逝ってるならば停止状態からの単相起動と
なり始動トルクが発生しないため三相拘束電流が発生してしまう。
定格の7~8倍大電流が流れて焼いてしまうかもしれません!
つまりシャフトが拘束(ロック)されたのと同じ状態です。
もちろんこういう保護特性を考えて設計者は盤を作っていますが保護
回路は動作するとは言っても老朽化したモーターが新品と同じ様に
必ずしも耐えられるか?絶対の保障はありません。
万全のため3E(過電流、欠相、逆相)リレーが今は導入されてるはず。

これは私のモーター点検の時ですがI0は当然ですが負荷電流と
マグネット二次電圧をなぜ測定するのかもうおわかりいただける
と思います。
MCB下やマグネット一次側でいくら正常電圧でもマグネット接点
劣化があれば不平衡三相交流をモーターに配給する事となります。
接点劣化による不平衡状態の初期症状を知る上でも動力回路
の電圧をどこで測定するかは大切だと思います。

★技術的に電圧不平衡率は3%以下が望ましいとあります★
誘導電動機の長寿命を維持するためには1%以下が妥当。
私の経験は線間電圧のばらつきが2Vもあった事はありません
表にある様な10V差とかビル設備ではまず考え難いですね。
いずれにしても何かあった時に各種データーを月に1回はとって
おく事は電気主任技術者の立場を守る上でも大切です。

不平衡三相交流を今回少し話しをしましたがたとえば200Vエアコンを
増設したいが空き容量がどの程度あるのかテナントに調べてほしいと
依頼があり、75AのMCBに35A、34.1A、33.1Aを測定したならばわざ
わざこれから面倒な不平衡三相交流計算なんてしません。
電気工事のオジサンとかでもたぶん99.99%できるわけないです。
こういう場合値は一番高い35Aを採用して75-35=40A、40×0.35で
14.0KVAの余裕があると返答すればいいのです。

実際測定したらその場で暗算で計算して14KVAですね。と答えます。
★この時必ず14キロではなく14KVAと返答しましょう★
相手がキロをKWと思うと力率0.85なら16.5KVAになってしまいます。
実際電流測定からでは負荷力率がわからないので皮相電力でしか
計算できないのでその点でもKWと勘違いされては困ります。
モーター力率も0.4~0.8と意外と幅があり適当にCOSφ=0.8に
してKWで返答してもKWを実測したらまず計算とは違います。
電源空き容量質問の返答はあくまでKVAでのみ私はします。

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