2016年1月6日水曜日

電気主任技術者 漏電事故

1/6今年初めての漏電事故が発生しました。
漏電調査は現場の電気主任になったら一番行うお仕事の一つ。
キュンキュンキュンと警告音が監視PCからいきなり鳴るので初めて
電気主任になった人はきっとドキいえヤバイと思うでしょうね?
でも職場の皆さんは電気主任の顔をチラと一瞬見るのです。
手伝える事があれば貴方の指示待ちで皆さんじっとされてます。
そんな時に一緒になってどうしようか?ではいけません。

今回は監視室PCにて第1変電室のNO3電灯変圧器500KVA
低圧地絡警報LGRが出たのです。


下がその第1変電室の変圧器でB種接地で計測すると522mAも出て
いて通常はここは20mA程度
ですからI0rを計測するまでもなく
どこかで漏電が発生しているのです。
I0方式で地絡検出してる現場は漏電の誤報が時々あると思う
けど本当の漏電は私の経験ではI0の500mA以上が頻繁又は出た
ままで対地間静電容量を通じた高調波などは突発的で継続しない。
こういう500mA以上では見てると800mAとか時々上がっており
こういう場合はすべての私の経験ではI0=I0rの状態で間違い
なくこの先のどこかに極めて絶縁不良な回路があります。
もし1000mAを超えてるなら1時間以内に見つけないと危険です。
私の経験的判断では今回は危険度70かな、もち即対応が必要!

現場のその変圧器用LGRで低圧地絡が出ています。
これが動作すると監視室PCでLGR警報が出るのですがこんな値
ではリセットもできません。
ここを500mA以上にして警報が出るのを制限させてはいけません。
誤報があっても200mA未満で監視管理すべきです。

変圧器の裏に回り変圧器の二次側全系統のI0をすべて計測して
故障回路の調査をします。

ただここは変圧器二次側~MCB一時側の保護回路がないケーブル
も共存してるのでもし充電部を短絡させると大スパークして顔面
大火傷になるという点で緊張感は必要です。
ここは通常透明の絶縁バリアーで閉鎖されているのでこれを開放
していいのは電気主任だけで作業していいのも電気主任だけ。

ケーブルを3本挟むため口径の大きな1/1000Aが計測可能で
ノイズカット付のクランプメーターが必要です。これは口径80mm
尚挟んだ時にクランプメーターの先端で隙間ができない様に注意して
計測しないと値が相当大きくなり故障回路を見誤ってしまいます。
電気を止めて絶縁測定をすれば?それでは無関係な店舗まで
電気が止まり今の時代は原則年1回の停電作業の時しか停電
は許されない
、電気を止めないで漏電を探す必要があるのです。

H1回路で406mAを計測、原因はこの回路です。
この1箇所と思っても必ず今回の事故で関連するすべての系統の
I0を測定した上で総合判断する事!
漏電とは無縁なノイズ削除のためFL機能は必ずONにしてください。

手法を紹介していますが★根本的にそれが可能な測定器が
ないとできませんから私の使用してる測定器を紹介します★

たぶん一般現場のクランプメーターでは幹線ケーブルを3本挟む
事ができないためもし私と同じ管理方法をされるなら口径の大きな
リーククランプメーターを会社に提案し購入してもらってください。
こういうケーブルでの漏電調査はMULTI社のMCL-800が最高。
お勧めはMCL800D(5万円)かできればMCL-800IR(10万円)

MCL-800IRならばI0rが測定できますが
私が持ってるのはMCL800DのためI0rが計測できないので
テンパール工業のRM-1をこういう感じでset使用する事で
ケーブルのI0rを計測しています。
今回の様に事故でI0=I0rの様な状況では使いませんが
通常の管理測定では基準としてI0rで毎月測定をしています。
RM-1は発生してるI0cと逆位相の電流を加える事でI0r
のみを検出させるというアイデア商品です。
低予算でとにかくI0r管理を始めるならMCL800D+RM-1
ですれば実売は合わせて6万円程度で購入可能です。

テナント分電盤での測定ではMCL800Dは口が逆に大き過ぎる
ため三和電気計器のI0R100を使用しています。
これはI0だけでなくI0rが単独で計測できる優れた物です。
(I0Rとはアイゼロアールと読みます。)
2P1Eの100V末端回路のここは法的に漏れ電流1mA未満
0.1mAなのでこの回路は正常とこういう場合判断します。
年1のメガが困難な回路はこれで絶縁測定の代用にできます。
おそらくどの現場にも1個はある停電できない回路の絶縁管理を
省略したり結果の捏造をしてはいけません。

こうした末端での単独回路のみという条件なら電気を止め
ないで絶縁測定
までI0R100は可能です。(活線メガ)
左が通常モードで右が活線メガモード、表示がmAからMΩに。
これは抵抗分漏れ電流(I0r)を計測できるので可能な芸当
でI0rとは対地間静電容量回路を含まない対地間抵抗成分。
I0rがわかれば電圧はわかってるのでオームの法則で対地間
抵抗つまり絶縁抵抗値
が停電せずともわかるのです。
リーククランプメーターでもI0rを計測してるわけではありません。
もちろん買ってただ使うだけでなく理屈もわかってこそ自分の
してる正当性を回りの方に主張できますし絶対質問されます。
答えられないと大丈夫なのか?と言われてしまいます。

最初の漏電調査の話に戻りますが
H1回路は現地でH-1AとH-1Bに分岐していますが毎月の点検
Ior値はこんな物でI0ならば1.2倍値くらいになります。
それにしても前述の406mAは完全な異常値です。
漏電事故では日常からこういう測定をしてないと比較できないし
比較すべき物がないのに異常と言っても説得力がありません。
他人(上司、顧客)は必ずなぜ異常なのか質問してきます。
変圧器B種接地、各系統、テナント分電盤主幹での毎月の
こうした測定は面倒でも事故時に強力な判断材料なんです。
ただ私が思うだけでは電気主任の意見でもこちらの話に理解
し従う者なんて一人もいません。(意見は根拠じゃない)

H-1A回路は1社であそこは分電盤主幹がELBなのでありえない
H-1B回路と思っていましたが計測するとなんと753mAもあり
かなりヤバい状況です。

こんな値だと分電盤主幹がMCBのテナントしかありません!
ELBだと瞬時にトリップして調査しなくても店舗の方から停電
したと電話がかかってきます。
主幹がMCBだから店舗も気がつかないで営業している状況。

こういう500mAを超える値がある場合、その系統のどこかに
極めて絶縁状態が悪い箇所が必ずあると思ってください。
電気主任として絶対にそれを探さないといけません。
MCB回路だといくらでも漏電しますからいつか電気火災に
進行する可能性大です。
現実的には20A回路なら完全地絡して2万mAをはるかに超えたら
過電流という事でやっとトリップするでしょう。
それまで警報まで切り放置して電気火災になったら故意の過失で
電気主任のどうこうより個人的に会社に訴えられるかもしれません。

これでとにかく4店舗に限定されました。
(この系統は天井裏で分岐してるのでこれ以上の分割調査はとても
困難となる)後は各店舗内での作業となるので一旦stop!
過去の事故状況、店舗の整理整頓の状況から考えてO社が
とても怪しいのですがここで保安統括管理者である技術部長に
漏電調査のため停電しての絶縁測定をテナント様にお願いします。
それかそのビルの防火管理者からお願いしてもいいと思います。
法的には電気の遮断権利は電気主任にもありますが店舗に制限
を与えるお願いはしかるべき方がするのがスムーズです。

独断で行いもめ事になれば貴方だけが責任追及されます。

ずばりその店舗分電盤で絶縁抵抗値が0Ωの回路を発見
ただ1個発見しても必ず全回路の絶縁測定を行う事。
後で実はここもとなると話が面倒なので不良箇所は1箇所という
思い込みは持ってはいけません。私の経験上ですが!
IOR100の活線メガ表示は一般の方には理解できないので
最後のキメは停電してする通常のメガ表示で示しましょう。
今回はその1回路のみが悪いので最後にそれだけをOFFにして
主幹投入してからEPSで再度I0を計測したら753mAが12mAに改善。
これでこの回路が確実に悪いと判明しました。

ありえない間違いをしないため絶縁値とI0の両方で判定して私は
異常と判定します。

余談ですが絶縁抵抗値0Ωだけどそれまで機器が正常に稼動して
テナントは使用してたので完全なる0Ωではありません。
それなら完全地絡だから電圧は0Vになりますが電圧は機器動作
範囲の電圧があったという事です。
漏電してもMCB回路ならギリギリまで電源配給可能という事です。
そして破滅的結果に一瞬でなるので漏電を軽視してはいけません。

ここからは店舗財産なのでテナントに設備改善命令
を技術部長が保安統括管理者として出します。
テナント入居の契約でそれに従うわない場合はオーナーは
テナントに営業停止命令を出せる事になっています。

★大切なのは
1.計測して値を表示してる状態の写真を捕る
後で見間違いとか言われないために言葉で言ってもダメ。
2.テナント契約をよく考慮してスムーズな流れで改善がなされる様
に必要ない意見は言わない。
必要なのは意見ではなく正確な結果なんです。
意見は相手に迷いを与える行為でお仕事では極力最小限に!
業務改善命令を出されてもどうしていいかわからない店舗の場合
は有料にて継続して私が調査、修理となります。
重症な場合は○○電工のSさんに連絡して手伝ってもらう事もあり
お金がいくらかかっても絶縁測定をして満足な状態にならなけ
ればあの故障回路は投入させません。

漏電調査は電気主任技術者を語るならできないといけない事
なので自分なりどうすれば迅速かつ効率的にその着任現場
で可能となるか普段からシュミレーションしておきます。
漏電は適当に勘で行うのではなく電源元から順番に負荷側
と調査していけば必ず故障回路と出会えます。

わからないからと漏電警報をOFFにしたり設定変更で制限したまま
運営をするなど電気主任としてプライドがあればできないはずです。


★漏電について昔第二変電室で発生した事例も紹介します★
これで貴方も私の点検方法を完全マスターできたでしょう?

まずこれが現地の500KVA変圧器で緑のB種接地でI0を計測すると
通常30mAのところがすでに583mAもある。

経験でこんな高い値ではIorとI0がほぼ近い値なのでI0rまで計測
せずともこれは異常な値で即調査しないと危険!

この変圧器の二次側のどの回路かを調べる必要あり。
これだけの値であればELBはトリップするのでMCBの回路しかありません。
各MCBを計測していくとある回路で566mAを発見!これです。
回路番号N9
でこれは7階のNO2EPSに行ってる回路だね。
尚メガ(絶縁測定)は無関係なテナントまで停電を伴うのでこれでの
漏電調査は今の時代まず無理でしょう。

7階のNO2EPSのN9回路がこれです。
ここで2分岐してるのでまず左回路からI0を測定

すると553mAもありこの配線が行ってるテナントで漏電が発生。
ここって確か今日オープンしたテナントさんなんだけどどうしてこんな
NEWなとこで発生するのでしょう。
それとテナントに"漏電してますので調査させてください。"
を宣言する場合は勘とかではなく計測により確定が必要。
もし違っていたら営業に制限をかけるので後からクレーム
が発生する場合があります。

迅速な行動を意識しながらまずテナント分電盤内の各MCB回路の
I0を計測していくとあるMCBが550mAとほぼ配給元で測定した
553mAと一致したのでこの回路で間違いありません。
ここでテナントに設備改善命令が出ましたがそのまま継続を
有料で受けたので原因調査開始しました。
調査修理費は会社規定で30分5千円+部品代ですが仕方ありません。
お金が絡むのでここからは私もガチ本気モードです。

ただ...ここは飲食ではなく普通のSHOPでしかも使用してる機器
(PC、プリンター)はすべてNEWで問題なしのはずです。
それなら機器絶縁不良のはずない、実際MCB二次側で100Vメガを
してもどの回路も20MΩ以上あるのになぜ?
絶縁不良がないのに550mAのI0が流れる現象とはどういう場合
つまり電源プラス線とマイナス線に550mAの差があるという事だから
その550mAはマイナスではなくてどこを通り変圧器にBACKしてるのか
これは...ある嫌な予感がしたので壁についてるそのMCB系統
のコンセントをすべて壁から抜き出して配線を1個ずつCHECKしたら
やはりこんなのが見つかりました。

貴方は上の接続を見て何が悪いのかわかりますか?
そう接地の配線.赤がコンセントのマイナスに電源のマイナス配線
白を接地に接続した配線間違いです。
(Wと書いてある穴に白つまりWhiteの配線を接続する)
これではこのコンセントで使用される機器の負荷電流が接地回路
つまり変圧器のB種接地に流れてしまいます。
漏電ではなかったんだけどこの電流に反応してLGRが動作したのです。
テナントが自分のとこで工事させた電気業者の配線ミス

アース付コンセントは下の様に配線しないといけません。
3心のVAで配線され黒が電源プラス、白が電源のマイナスで
赤がアースとなるのです。

家庭では元電源にELBを使うのでこの場合切れていますがビルの
事務所系で厨房などがない場合はむしろ使う事が少ないです。
元電源が飛ぶと業務に大きな支障が出るからです。
結局配線を正しくしただけで済んだので1万円で修理は完了です。
重症な場合で電気屋さんを応援に入れたら5万円くらいでしょう。

上の説明がピンとこないなら下の絵で電流の流れを考えてみて
MCBの二次側でメガは問題なくても接続を間違えると変圧器には
その違いが出てしまうのです。
ELBにすれば電源が切れますが店舗、事務所では停電は非常
に支障が出るため主幹には普通使いません。