2015年4月17日金曜日

電気主任技術者 停電作業

貴方が電気主任技術者になって一番最初の難関はこの停電作業です。
どこの自家用電気工作物でも保安規定に従い停電作業を行います。
基本毎年で最近では条件を満たせば3年に1回の現場もある様ですが
いずれにしても貴方が電気主任技術者になったならこの日だけは貴方
一人がリードしていかないといけません。
半年後に実施とかでは前任者はもういないし、そうなれば自分流で
するしかありません!私もそうしました。


まず下の様にエクセルで誰もがわかるマニアルを時系列で作成します。
私は前任者のマニアルは廃棄しまったく違うスタイルで作成しました。
理由は私から見て不適切な方法があったのと文字の羅列でわかり難い
マニアルだったので私の責任において作り直したんです。
スケルトンはエクセルの図形ツールで私は作成しましたが、写真や図面を
貼りつけてとにかく間違いを起こさない物を作れるかが停電作業の進行に
大きく影響します。

私の勤務するビルの場合ですがTOPが22000V受電で変圧器で6600Vに
下げて各キュービクル(変電室)行きとして52F1~52F7まであります。
ビルの屋上にある物もあるのでさすがに私も体が一つですから
ある方をお願いしています。
そうあの中国電気保安協会の人達を30人位雇い各サブ責任者として
配置します。下請けも含めたら当日は50人くらいでしょうか
Dは私、Nが保安協会、Sが設備の人が基本担当です。
朝の朝礼で全員の前で電気主任として司会進行をしますが
しっかりした態度で弱気な普段の自分は必ず捨ててください。

私は大元の特高室の操作盤のとこにいます。
8:30に電力会社との直通電話で最終確認。
トランシーバーで52F1~52F5の各責任者とやりとりしながら
順次にVCBを手動で切る様に私が指示します。
私側からも切れますがこうするのが最善と思いそうしてます。
(命令口調で切りを告げたなら必ず相手の操作完了
を聞いてから次に指示します。
)
計器を見てれば切ったのはわかりはしますが絶対にそういう物
で思い込み操作はしてはいけません。
マニアルは上+下で1P目で全部で5枚あるので1/5です。
5/5が復電操作マニアルになりますがこの私の指示書で業者
の皆さんは動くので事前に何回も無駄な動きがないか検証します。

停電させる場合は下から切っていき最後に受電を停止させます。
こうする事で電気の帯電量が最小にできるのです。
実はいきなり受電VCBで全停電させたくらいで機器が壊れる事
はありませんが作業員の安全のためにこういう切り方をします。
(どんな現場でもこれが停電の基本中の基本、復電操作は逆)

なぜ今時携帯ではないのか?されてみるとわかるけどこういう
場合は携帯電話よりトランシーバーの方が作業性がいいからです。
52F5までVCB切りが完了したならば保安協会のB1担当者に
配置してください。と命令します。
下請け電気業者が61LのDSの前で待ちます。
中国電力に電話して”それでは準備が完了したので152Rのメイン
を切ります”と言ってから切ります。
ガチャンとVCBが切れたら"今遮断しました。"とすぐに連絡をして
電力会社が22000Vを止めてくれるのを待ちます。

相手から"8:37に送電を止めました”という連絡を受けたなら必ず
受電メーターで22000Vが0になったのを確認。
(図では省略してるけど152R一時側にもメーターあり)
また検電も行い実測定でも必ず確認します。
中国電力に"送電停止確認、それではDSを開放したなら再度連絡をします。
"と返答後に作業員に61L開放を指示
(この時何時何分にどちら側がどんな操作をしたか必ずメモを
残す事は大切です。)

電力会社には61Lを切り完全にLINEと遮断された事を連絡すると
今度は電力会社が区分開閉器を切るのでこれで22000Vの電気が
絶対来ない事になります。
ここで受電一次側への接地取付を指示します。
再度電力会社に連絡して接地取付すべて完了したのでこれから
作業に入ります。と必ず連絡をします。
ここから皆さん作業を開始してください。と私が言って
本日の作業STARTです。
ピーンと張り詰めた雰囲気で後にはたくさんの業者の方が私一人
に注目してるので毎回緊張します。
それでパニくる様ではこのお仕事はできません。

発電機は最初に152Rを切った時点自動運転しています。
このビルの場合停電作業中は事情で52F6、52F7の送電だけは
止めません。
昼時間だけ完全停電させるのでその時間中にこの部分のキュービクル
だけ点検をします。
52R1、52R2、52Bは専用のUVRを持っていて自動で切れるので
テストの意味であえて152R切りより後で自動で切らせます。

実はこの現場は高圧充電部に作業員が触れるという活線事故を
大昔起こした事があるのです。

連絡の周知徹底ができてなかったのと流れがわかり難いマニアル
のままでその面影を残したままでした。
★前任者の方法と言えど間違いはすべて捨ててください★
悪い物を引き継ぎそれで事故が起きても貴方の責任ですから!

業者への配布資料の最初のページの一部ですがここに12:00~13:10
の間のみすべて電気が停止する事だけを強調しておきます。
停電作業中は完全停電される現場ならばいいのですが一部発電機で
6600Vが生きてるので周知徹底させます。
もちろん現場には虎ロープを張り関係者以外立ち入り禁止などの
処置もしています。
私がそのロープを外すまでは52F6、52F7に近づいてはいけない
ルールになっています。


本当は現場で作業をしたいのですが電気主任技術者が特定の事だけ
に気を取られては全体の進行に影響するので
基本私は必ず特高室にいます。
又常にトランシーバーを携帯し各現場の責任者と連絡が取れないと
いけません!
特高や高圧部分は私も普段から点検してるのですがテナントの
営業店舗内の分電盤はこの日に保安協会の下請けが点検を
してくれています。(低圧絶縁も同時にする)
設備の方がずっとしていたのですが不手際がありH25年からは
低圧部分の店舗分電盤も電気屋さんにさせています。
私もその方が安心なのが本音です。

配線が焼けた後がある、店が無断で雇った電気屋が変な事をしてる?
とかあれば私に連絡が入ります。
VA、コンセント、SWの取替程度ならば私がその場で行いますが
修理に30分以上かかると判断したら今日来てる下請け
の電気業者にお願いします。
ここだけに私が時間をかけるわけにはいかないからです。
この時の修理費用は後で店舗に請求するので状況を撮ったり
する事も忘れてはいけません。
(もちろん店長にまず電話して工事許可をもらってから)

共通的に他のビルでも有り得る注意事項として

・設備として銀行ATM、光交換機、携帯電話の基地局がある場合
停電の事前連絡を遅くても一週間前にはしておきます。
連絡を忘れていて停電できないなんて事になると大変です。
携帯会社などの場合は発電機車などを持って来る事が多いので
近隣からの騒音苦情には注意してください。(特に夜間行う場合)
すぐに警察に通報される様な短期な方はたくさんいますから!

・社内NETWORKを持った事務所では通達した時間JUSTに電気を
止めないといけないのでメインVCBを切る時間を通達してはいけません。
当日何があって停電時間がずれるかわかりませんからそのテナン
ト行きMCBだけを事前に正確に切りましょう。
こういう設備は支店同士で接続されてるので秒単位で正確に電源は
切る様にしてください。(重要な事は人任せにしない)

・停電後は電子錠はその直前のままを保持しますから停電前に
各テナントの施錠状態の確認をする。
(鍵が開いたままで停電させ盗難が発生したら責任問題)

・電気を長く止めるとなぜか調子を悪くするテナントの機器が時々発生します。
"変な高い電圧をかけたのではないか?"という事を言う方もいるので
各キュービクルのMCBを切った時の写真を最近は撮る様にしています。
送りはきちんと切り御社に迷惑はかけていません。と返答をするにも
言葉だけでは信用は薄いです。

.各テナント責任者の緊急連絡先を把握しておく。
何かあっても又は重大な欠陥を発見した場合に緊急に連絡が必要。
尚客先財産に関しては最終的な判断は私ではなくお客様になるので
私は有効な選択肢を提案します。

・警備会社への事前連絡
テナントが連絡を忘れてる事がよくあり当日に機械警備の人が来て
騒がれるのは面倒ですからね。

・給水設備が圧力式のビルでは復電したままで放置すると水道蛇口か
ら赤水が出て、飲食から営業ができないなどのクレームが翌朝に
発生しますから宿直者にエア抜きと水切りを十分にしてもらう指示を
忘れてはいけません。

★当たり前ですが停電作業の翌日は電気主任技術者は絶対
に休んではいけません。★

復電後の影響があるとすればテナントがそれに気がつくのは
翌朝ですから。

電験三種をいくら事前に勉強してもこういう事はわからないでしょう?
こういうのは経験で学んでいく物で私の経験が貴方のお役に立て
たならば幸いです。

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自家用電気工作物において電気主任技術者はなぜ必要か
質問されたなら、貴方は即座に答えられますか?
間違いなく高圧側において波及事故をさせないためです。

所内の高圧側で過電流が発生して区分停電に至る。
何の原因究明もせずに素人の方が家のブレーカーを入れる様に
再度VCBを強制投入!
今度は短絡による莫大な電流によりビル外の安全装置が動作して
近隣設備まで停電させる事故!

これが発生した場合、事故報告~立入り検査は当然だけど
他ビルに入居してる会社から損害賠償を請求されるかもしれません。
もちろん電気を止めた事により復旧に要した費用は電力会社から
請求されます。
その原因が電気主任技術者のミスならば解雇されるでしょうね。

そういう事故は普通に管理してればまったく無縁か数十年に1回発生
するかしないかだけど最低限高圧側事故が所内で発生した場合の
想定対応は作成しておくべきです。
貴方だけしかできない事もありますが他の職員の方がそれに遭遇
した場合のマニアルも必要です。

低圧側事故は変圧器がある程度壁になるのでそれで高圧側の
波及事故に至る事はまずありません。
高圧側でOCR(過電流)や地絡(GR)が動作した場合は必ず
原因究明なしでの再電源投入は禁止です。

普通ビルの急な停電といえばUVR(不足電圧)だけの要素で
VCBがトリップしてるはずです。

システム上でOCRやGRで停電に至った場合は発電機は起動しない
様になっています。とりあえず停電になったからと発電機を手動で
強制送電する行為はOCR,GRでの事故では厳禁です
この二つについてはUVRの様に自動復帰しない様に人間が手動
でしかリセットできないはずです。
それをしない限り関係するVCBも投入しても入りません。

UVRつまり外が原因で館内停電に至った場合ですが発電機に
よる売電側への逆送電を防止
するためにメインVCBと発電機VCB
は同時にONにならない様にインターロック回路が組まれています。
ビル外で電気事故が発生してるのにビルの発電機により外部の
送電線に電気を逆に送ればどうなるか?
それは誰が考えても容易に想像できるはずです。

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